​米を食べて花粉症を根治できる時代がくるかも!?現在の状況はいかに 

​米を食べて花粉症を根治できる時代がくるかも!?現在の状況はいかに 

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日本人の主食である米で花粉症が治る!?その名も「スギ花粉症緩和米」。スギ花粉症の人にとっては夢のような話ですが、旧農業生物資源研究所が研究しているこのお米が今どのようになっているのか、現状を緊急リサーチしてみました。

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日本人の3割がスギ花粉症!

国民的アレルギーである花粉症は、花粉アレルギーの人を含むと全体の約35%、そしてスギ花粉がピークとなる3月にはそのうちの約80%の人たちが症状を訴えています(2015年日本リサーチセンター調べ)。これを根絶すべく開発されたのがスギ花粉症緩和米。ご飯を食べて花粉症が治るとはどのような仕組みになっているのでしょう!?

「花粉症緩和米」とは

農業生物資源研究所が開発中

農業生物資源研究所(平成28年4月1日に国立研究開発法人:農研機構(稲の研究では世界トップクラス)と統合)と日本製紙、サタケ(広島:食品の製造販売等)の合同研究チームが遺伝子組み換え技術によって開発したものです。

研究に多量のコメが必要となるため、2004年に神奈川県平塚市の全国農業組合連合会(全農)の隔離ほ場でイネの栽培・実験用の種子の生産が計画されましたが、地元の反対により中止。その後、2007年に日本製紙が徳島県の小松島工場内に閉鎖型大型温室(年間700kgの収穫が可能)を作り、栽培が開始されました。これにより大幅な研究の進捗が見込めた農水省は2010年をめどに、特定保健用食品(トクホ)としての販売を計画します。

しかし、厚生労働省は治療を目的としているので医薬品であるという判断を下しました。これにより、農水省はトクホとしての販売を断念。医薬品としての開発過程を新たに始めることになり、マウスやサルによる動物実験、東京慈恵会医科大学や大阪府立呼吸器・アレルギーセンターによる臨床試験等を実施し、医薬品としての認可に向け研究中となっています。

イネ科の遺伝子組み換え食品

正式名は「スギ花粉ポリペプチド含有米」と「スギ花粉ペプチド含有米」と呼ばれています。ポリペプチド含有米は「コシヒカリ」、ペプチド含有米は「キタアケ」(北海道)と「日本晴」(滋賀県他各地)の遺伝子組み換えを行ったものです。コメの品種が違うだけで組成方法は変わりません。

仕組みは、花粉に2種類7個ある「エピトープ」と呼ばれる抗原(人体内にある抗体が攻撃対象として認識する物質)を1個の人工的なDNA(7crpDNAと呼ばれている)に合成し、それをコメの中で作らせ、そのコメを食することで抗体に花粉が侵入したと錯覚させる方法です。抗原はひとつなので反応も小さく、副作用もありません。これを毎日続けることで体内の抗体を減らし、アレルギー反応を抑えることができるようです。いわゆる最先端減感作療法(体の中の抗体を減らし過剰なアレルギー反応を抑える治療法)、体質改善による根本治療と言えるでしょう。

現在までの治験の状況

農業生物資源研究所は2007年4月に動物実験の結果、異常は確認されなかったと発表しています。実験対象はマウスとカニクイザル。スギ花粉症緩和米をマウスには13週間、カニクイザルにはおかゆ状のものを26週間与えて結果を測定。遺伝子・染色体・臓器・生殖などへの異常はなかったとのことです。そして懸念されているスギ花粉症緩和米が新たなアレルギーの原因物質になるのではないかという点では、血液中にスギ花粉に対する抗体が作られていないことを確認し、誘発の可能性のないことがわかったそうです。

人間の有効性試験(配合された成分の有効性を確認する試験)が最初に行われたのは、2013年12月から5か月間、患者30人に対してでした。血液検査では免疫反応の抑制を確認でき、副作用もありませんでした。しかし、症状に対する患者自身の評価は良好でしたが、「効く」という科学的な証明はできませんでした。

そして、大阪府立呼吸器・アレルギーセンターと東京慈恵会医科大学で、2016年11月~2017年4月まで臨床研究が行われています。50gのご飯にスギ花粉が「0g」「5g」「20g」含まれた3種類のパックをそれぞれ15人ずつの患者に半年間毎日食べてもらい、定期的な血液検査と、2月からは自覚症状などのアレルギー日誌を毎日つけてもらうという方法です。3月時点ではとくに健康被害は出ていないようです。最終的な分析結果が待たれるところですね。

花粉症治療のメリットとデメリット

シーズン前から服薬する初期療法

スギ花粉であれば、ピークが例年2月以降になりますので、1月中には医師の診察を受けて治療(抗アレルギー薬)を始めるのがいいでしょう。すでに発症している人であれば、症状の出始める時期がある程度わかると思いますので、その2週間くらい前に準備を始めるのが良いです。個人差はありますが、症状が出る前の早めの段階で治療を始めると、発症が遅くなり、症状が軽くなって、終了時期も早くなる傾向があるそうです。花粉症の期間が短く、軽い症状で済むのです。

そして、初期療法を始める時期に合わせて、マスクや花粉用メガネなどのアイテムも早めに装着し、体内に少しでも花粉を入れないように工夫しましょう。症状が出てからの治療だと薬も効きづらく、くしゃみ・鼻水でつらい思いをしながらの治療になりますので早めの対処がお勧めです。

シーズン中の症状を緩和する対症療法

​症状が出始める前の初期療法よりも少々強めの薬(ステロイド系など)が必要になり、点鼻薬や点眼薬なども併用するようになります。さほど重症でなければ、初期療法時の薬の継続で治療することも可能ですが、くしゃみ・鼻水が伴うことが多いので点鼻薬と点眼薬は処方してもらうのがいいでしょう。花粉症が発症するとほとんどの人がまぶたの裏側にアレルギー反応が出て、目のかゆみや目やになどが出ますので点眼薬も持ち歩くようにしましょう。

減感作療法は「治す」ことが可能

花粉アレルギー反応は、アレルギーの基となる花粉などの「抗原」が体内に侵入すると、異物に反応する「IgE抗体」が作られ、外敵を追い払おうとする「ヒスタミン」が分泌されます。本来有害ではない花粉などを外敵とみなし過剰に反応した結果、くしゃみ・鼻水などの花粉アレルギー症状を発症してしまいます。本来の免疫機能の勘違いによって引き起こされる症状なのです

減感作療法は「抗原」を少量ずつ体内に取り入れ、「抗原」に体を慣らし、免疫機能の勘違いを取り除いてあげる治療法です。徐々に体を慣らしますので長期間に及びます。でも、花粉を異物と勘違いしなくなった免疫機能はもう花粉には反応しなくなり、アレルギー反応が収まるという仕組みなのです。つまり体の中からアレルギー反応を消し去ろうという画期的な治療法が減感作療法なのです。治療法は、「注射」によるものと「舌下免疫療法」があります。

​注射舌下免疫療法
​期間​約2~3年以上​約2~3年以上
​やり方​開始から4~6か月ほどは週1回(2回のケースもあり)のペースで、その後は2週から4週に1回​初回受診後、毎日ある程度同じ時間に自分で舌下に投与
​通院​注射の都度、毎回通院​2週~1ヶ月に1度
​効果​約80%以上の患者が薬の減量・無症状が期待できる​約70~80%以上の患者が薬の減量・無症状が期待できる(注射よりは若干劣る模様)
​保険適用​〇​〇
​副作用​頻度は少ないがアナフィラキシーショックや喘息発作、注射部位が腫れることがある​注射よりも少ない

期間や効果・副作用など個人差はありますが、根本的な治療となるので長期に渡ります。注射はその都度受診しなければなりませんので、治療のための拘束時間がかなりの負担になり、薬剤等の開発が進んだことも追い打ちとなってあまり普及はしませんでした。舌下治療は効果こそ注射よりも少々劣るものの、通院の頻度が低く、治療法も自分でできる簡易なものなので注目されていますが、現状ではスギ花粉にのみ有効となっており、スギ以外の花粉症の人には効果がないようです。

スギ花粉症緩和米のメリット

毎日のご飯で「減感作療法」ができる

何と言ってもお米を食べるだけというのが最大のメリットでしょう。通院、薬の服用、他の減感作療法でするような定期的な作業が一切ないのです。スギ花粉症の人にとって、花粉症対策そのものが不要となるわけですから、生活における負担軽減は計り知れないでしょう。ただ現在は研究・試験の段階ですので、1日の摂取量等が明確になっていません。他の減感作療法を見てみると、最初は微量で初めて徐々に量を増やしていく、もしくは濃度を濃くするなどの傾向がありますので、最初は1食分で様子を見ながらその後に増やしていくということになるかもしれません。

1日3食分必要となった場合は、サラリーマンやOLにとってお昼をどうするかという新たな悩みが浮上しそうです。でも、考えてみてください。くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどから解放されてご飯の心配をしなければならないとしたら、ある意味幸せな悩みではないでしょうか。


カルナ博士
でも、お米に抗原を忍ばせても消化されないのかのう?
ひばり
それが大丈夫なのです。スギ花粉ペプチドは胃で消化されにくく腸まで届く栄養素に忍ばせます。その結果、免疫寛容(人体がアレルゲンに慣れる働き)が促進されて、症状が改善・治癒していくというわけなのです。
カルナ博士
なるほどのう。それなら心配はいらんのう。 

 効果が現れるまで8週間

東京慈恵会医科大学・齋藤三郎研究部長によると、1日1回8週間程度続けると効果が表れるケースがあるとしていますが、まだ研究段階ですので正式なデータは公表できないようです。もちろん人によっても個人差があります。現在行っている臨床研究(2016年11月~)では、スギ花粉米を半年間1日1回50g食べるという試験を行っています。2018年のスギ花粉シーズンも視野に入れているようですが、この試験結果により効果の見込める服用期間、治癒の見込める服用期間等が判明するものと思われます。なお、現状では副作用も認められていないようです。

いつぐらいから手に入る?

農林水産省は2020年度を目指す

様々な変遷を経て、農林水産省は2020年度の販売を目指していますが、まだ確定的にはなっていないようです。それには2つの大きな要因が関係しています。

遺伝子組み換え食品

自然界に存在しない遺伝子を持った食品は、国(厚生労働省)が最終的な認可をしなければ市場には出すことができません。認可に至るまでには厳しい審査があります。まず、安全に対して科学的に明確な根拠が必要となり、その後申請を受けた厚生労働省は評価依頼・内容精査を「食品安全委員会」に依頼します。そして、「遺伝子組み換え食品等専門調査会」が行った市場調査などの内容を基に「食品安全委員会」が安全性の評価を厚生労働省に通知します。

最終的に科学的知見に基づいて安全性に問題がないと判断された食品が認可されます。このことから、まず申請にあたって確かな科学的根拠が必要となること、申請後は厳正な審査が行われることなどから年単位の期間が必要になります。

医薬品としての扱い

当初2010年に特定保健用食品(トクホ)として販売しようとしていた農水省ですが、2007年に厚生労働省が医薬品として最終判断したことにより食品開発から医薬品開発へとかじを切ったという経緯があります。医薬品となると臨床試験の方法・内容・結果は基より、製造方法・規格、安定性、薬理作用、毒性等々様々な基準があり、「医薬品医療機器総合機構」の随時的な審査・調査の後、「薬事・食品衛生審議会」の諮問を経て、最終的に厚生労働省の承認待ちとなるのです。この承認を得られるのは、医薬品の製造・販売許可を持つ業者(製薬企業)に限られます。

価格は普通のお米並み+αを希望!

2017年4月現在では販売価格や内容についての詳しいことは決まっていませんが、東京慈恵会医科大学・斎藤研究部長は現在の米の値段相当での販売を希望しているようです。

米が救世主になる日がくる!?

日本人の主食である米でスギ花粉症を治すという画期的なことが現実となったら、何千万人という人の苦しみが救われることになるでしょう。うっとうしく思える春が、待ち遠しく思えるようになる日が来てほしいですね。壮大なロマンが現実となり、研究者たちの努力が実ることを願うばかりです。

参照リンク

花粉症緩和米の研修開発|農業生物資源研究所

栽培実験計画書|農業生物資源研究所

実用化に向け「スギ花粉症緩和米」の研究試料を栽培|日本製紙グループ

臨床研究プレリリース|農研機構
バイオカフェレポート|くらしとバイオプラザ21

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